配偶者には特別控除があり、1億6000万円を超えるまでは相続税がかかりません。
たすかる一方で、他の人に相続するときに相続税の負担が重く感じる場合があります。
相続が発生した時に考えておきたいことをまとめてみましょう。
■配偶者の相続ゼロのあらまし
相続税には、『配偶者の税額の軽減』という制度があります。
相続される財産の中には、それまで住んでいた土地・家屋が含まれますし、都市部では思いがけず高額になる場合もあります。
この制度を利用すると相続税の負担が軽くなり、税金の支払いのために土地・家屋を手放さなければならないことが避けられます。
次の①、②のうち、多い額が控除されます。
①1億6千万円
②配偶者の法定相続分相当額
配偶者が遺産相続した場合の続額税は、ゼロにできるということです。
では、できるだけ配偶者の配分を大きくするのが節税になるということなのでしょうか?
■遺産相続の配分をどうするか
あなたの父親の遺産が、土地・建物を含め2億円あり、母親とあなた、その弟で相続することになった場合を考えてみます。
①法定相続の配分の場合
・基礎控除=3000万円+3×600万円=4800万円
・課税対象額=2億円-4800円=1億5200万円
・母親1/2 の7600万円<1億6千万円⇒相続税ゼロ
・あなた1/4の3800万円×税率15%-控除50万円=520万円
・弟1/4の3800万円×税率15%-控除50万円=520万円
さらに母親が亡くなって1億円相続したとすると…
・基礎控除=3000万円+2×600=4800万円
・課税対象額=1億円-4800万円=5200万円
1/2の2600万円にかかる税額は…
2600万円×税率15%-控除50万円=340万円
②母親に1億6千万円相続の場合
・母親の相続税はゼロ
・残りの4000万円の1/2ずつをあなたと弟で相続
・2000万円×税率15%-50万円=250万円ずつ
一見節税になっていますが、母親が亡くなった場合、1億6千万円をあなたと弟で相続するときには…
・基礎控除=3000万円+2×600万円=4200万円
・課税対象額=1億6千万円-4200万円=1億1800万円
1/2の5900万円にかかる税額は…
5900万円×税率30%-控除700万円=1070万円
税率は、3000万円まで15%、5000万円まで20%、1億円まで30%で、5000万円を超えると税率が高くなってしまうのです。
■子どもの代の相続まで考える
母親の亡くなった後まで考えた場合、あなたが支払う税額は…
①のパターンでは、520万円+340万円=860万円
②のパターンでは、250万円+1070万円=1320万円
配偶者の軽減措置を大きく使うと、支払う税額が大きくなるケースが出てきます。
しかも、相続する財産が土地・家屋で、1000万円を超える相続税がかかるとなれば、現金化して対応するしかない場合もあるでしょう。
実際には土地・家屋の評価額は、路線価を基準にしますから、市場相場では高く売れる場合もあります。
相続の仕方を考えるには、実際の評価額に詳しい不動産会社に相談しておきたいですね。
『国税庁公式サイト:配偶者の税額の軽減』
https://www.nta.go.jp/taxanswer/sozoku/4158.htm
『国税庁公式サイト:相続税の税率』
https://www.nta.go.jp/taxanswer/sozoku/4155.htm