不動産の相続人になっても、家に住めない場合もありますし、売却などで相続額がプラスになるケースばかりではありません。場所が遠い、コストが負担になるなど、相続放棄を考える方もいらっしゃるでしょう。しかし、こうした場合『相続放棄=空き家管理からの解放』ではないというところに注意が必要です。知っておきたいことをまとめてみましょう。
■相続放棄と管理責任
不動産を相続するときの悩みとして多いのは…
・通勤出来ない場所の物件を相続しても住めない
・なかなか行けないところの不動産を相続しても管理ができない
・築年数の経った家屋が建っていて処分が難しい
・相続しても修繕・取り壊し費用を出すとマイナスになる
土地の評価額が高ければ、土地を売却して諸費用をまかなうことができるケースもありますが、古い家屋の取り壊しや修繕、管理に費用がかかり、相続の収支がほとんどゼロやマイナスになってしまうという事があります。
親から財産を受け継いでも、自分の資産が増えずに目減りしたり、維持管理に頭を悩ませたりするくらいなら、相続放棄したいと考える方もいます。
ところが、相続放棄をしても、次の管理責任者が決定するまで管理責任を追わなければならないのです。
■管理責任があるとこんな心配が…
相続放棄された不動産は、相続人する人がきまるまで、空き家のまま時を過ごすことになります。
売却するにも、一度、所有権の移動をしなければ売買契約で問題が起きてしまいます。
亡くなっている祖父母名義の不動産を管理していた父が亡くなった…などのケースでは、前の代にさかのぼって相続登記をする必要が出てくるのです。
第一法定相続人になっていると、相続を放棄しても、次の相続人が決定するまで管理責任を問われることになります。
“民法 第940条
相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。”
(参考)民法940条
https://ja.wikibooks.org/wiki/%E6%B0%91%E6%B3%95%E7%AC%AC940%E6%9D%A1
■空き家の管理責任を早く解消するには?
いったん相続登記を行い、売却によって相続財産を精算する方法が一番早く決着するのではないでしょうか。
もし、相続人が決まらない場合でも、固定資産税の支払い義務がありますし、もし競売になれば評価額よりもかなり低い金額で処分されることになります。
相続登記を行って、売却できる環境を整えておけば、不動産の価値が最大に引き出せます。
管理責任をきちんと移動させるには、放棄ではなく、売却、新しい相続人の決定、寄附を検討すべきなのです。
(参考)No.4141 相続財産を公益法人などに寄附したとき
https://www.nta.go.jp/taxanswer/sozoku/4141.htm