空き家問題とともに、『行政代執行』が注目されるようになりました。これは、憲法13条の公共の福祉に触れるような、“倒壊のキケン”や“景観の悪化”、“不衛生”などの状況に陥っている空き家は、行政が代わって撤去できる仕組みです。空き家の『行政代執行』について紹介しましょう。
■2016年の行政代執行の例
『東京都板橋区:1月』
倒壊の恐れがあることと、敷地内にゴミが山積みになっていたため、解体と撤去作業が代執行されました。所有者が亡くなったあと、相続放棄され、所有者がいない状態になっていました。
『兵庫県明石市:3月』
所有者が不明な老朽化した住宅が通学路にあったため、行政代執行が略式に行われ、解体されました。
『東京都葛飾区:3月』
所有者がわかっているケースではじめての行政代執行となった例です。70代の建物所有者が住宅を建てていたのは借地で、老朽化の対策指導に応じられず、手続きを本人が進めることができませんでした。
『北海道室蘭市:8月』
隣接する敷地下の住居に直接の被害を出したが、所有者は固定資産税を滞納するなど対応することが出来ない状況だったため、行政代執行となりました。
■行政代執行にいたるまでの過程
公益に反するなど、『特定空き家』の要件に当てはまるか調査が行われ、所有者がわかれば、指定の前に助言や指導がなされます。
『特定空き家』に指定されれば、文書による戒告が行われます。
管理が出来ない事情など、自治体に相談することで対策を講じられるケースもありますが、助言や指導を拒否したり、応じなかったりした場合には、行政代執行によって解体されることもあるのです。
<特定空き家の要件>
(イ) そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
(ロ) そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態
(ハ) 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
(ニ) その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
(参考)国土交通省「特定空家等に対する措置」に関する適切な実施を図るために必要な指針
http://www.mlit.go.jp/common/001090531.pdf
■行政代執行の必要性
空き家が問題視されるようになってきた背景には、核家族化・少子高齢化で所有権が宙に浮いてしまった住宅が増えてきたことがあるでしょう。
高齢での一人暮らしがゴミ屋敷を生み出したり、管理されず放置されたままキケンな状態になったりしている住宅は、近隣住民の公共の福祉の観点から放置するわけに行きません。
行政代執行は必要な仕組みと言えるでしょう。
ただし、空き家の持ち主からすれば、納税と同じ強制力をもって、費用を請求されるのですから、不動産を引き継ぐときには、管理には気をつけなければなりません。